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台風一過 九月

立春から数えて二百十日の9月1日から二百二十日に当たる9月11日。
古くから最も台風が多い時期。
今年の季節は肝心なところで狂わず、そのとおりに昨日の激しい野分けに。

野分は秋の優しい涼風にも句や歌では使われるものの、その文字のとおり
平安の昔より台風の古語として、やはり二百十日のような強い風雨が
あまりにも良くその勢いを表しています。


九月

本来の旧暦和名では「長月」という名前があるのは広く知られるとおりで、
新しい類推では「菜刈月(ながりつき)」の変異という話もありますが、
「夜長月(よながつき)」の略であるとするのが現在のところは最も有力のようです。

「菜刈月」という新しい類推や、
「稲刈月((い)ねかりづき)」、「稲熟月・稲上月(いねあがりづき)」などの
古くから『その語源』とされていた類名も、
すべては自然の中に身をゆだね、収穫というその恩恵への感謝と
比例する畏怖を保ち続けた、日本人らしい健やかな思いにあふれているように感じます。

畔は一様に曼珠沙華に彩られ、近畿という地に根差す自分にとっては
盆の送り火に応えた、たくさんの報せの火のように思うような時があります。
子供のころより「触ってはいけない毒の花」と言われ、
その不可侵をもって屹立する赤い火のような花は、
一層に涅槃の安らぎをこちらの側は温かく知るのみというように思えてなりません。


 薄づける 彼岸秋陽に 狐ばな 赤々そまれり ここはどこのみち

                                  ― 木下利玄



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送り火も、曼珠沙華という火も、祠の狐も、子供のころにはひどく怖かった。
そして、手を合わす日常とは異なる父母や大人たちの表情に
そわそわしたり、自分がどうしてよいのか判らぬ思いに抓まされたことを覚えています。

その怖かったものの持つ静けさやエネルギーは、大人になった今眺めると
思い出せない大事な何かが近づいては遠ざかる、稲穂の波のような、
子供のころの自分からの報せであるかのように大事に思えます。






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by h_s_t | 2013-09-05 16:23 | 日々のこと
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