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白丹波 午后 金木犀

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それは、本来それぞれに完結しており
人がそれに介在するのは 少し億劫にさせるような時もあり

一見は人の世の関係にも通じるような気もしますが
それはやはり、自分たちとは異なる花という生き物なのだと思います。






知識ではなく花を知りたいという気持ちで
花を生けることは十分なのだと教えられましたが
花を知ろうとしないのではなく、
目に訴える「生ける」という行為が無駄に思える刹那。


自分などは香りの強い花に出会うとそう思い、
加えて金木犀という花は特別な何かを思います。






香りの似た、銀木犀の亜種であり、
春の沈丁花に並ぶ香花。








Düfte sind die Gefühle der Blumen.

              ─────   香りとは花の感情だ


「ハルツ紀行」抜粋(岩波1933底本-内藤匡訳)
         ───  Christian Johann Heinrich Heine / 1797-1856





そう感情と言い表したのはハイネであり、ロマン派と一括りにできない
動乱期を過ごした末の男の、言葉のように思います。

美文と評されたり揶揄される「清げ」なものは
得てして、多くの濁りに耐えた末の所産のものも多く。


















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生ける前の時が 最も蜜な関係性をつくるときもあるように思います。

花を考えると それは短い時間ですが。








生けないで終える

生けられはしないという選択は、

傍を求め合った

「親密な終わり」のひとつかもしれません。




















秋、人をふと立ち止まらせる

甘いつよい香りを放つ

金色の小さな花々が散って

金色の雪片のように降り積もると、

静かな緑の沈黙の長くつづく

金木犀の日々がはじまる。


金木犀は、実を結ばぬ木なのだ。


実を結ばぬ木にとって、

未来は達成ではない。


冬から春、そして夏へ、

光をあつめ、影を畳んで、

ひたすら緑の充実を生きる、

葉の繁り、重なり。つややかな

大きな金木犀を見るたびに考える。


行為じゃない。

生の自由は存在なんだと。


           ───  「冬の金木犀」抜粋 / 長田 弘 1939-2015

















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白丹波 江戸末期  御売約 個人蔵



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                   百芍丹
by h_s_t | 2016-10-28 03:03 | 品々のこと
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