瑠璃

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伊万里、瑠璃の小皿。



小品とはいえ、古色の藍で器体の全てを包み込み
私たちが、もはや知りようも無い 古い時代の夜の闇を
目を通して耳朶あたりに
ふっと気配づかせるようです。


独酌の盆に添えると、図らずも見えるその古い夜に
心揺さぶられる小さな佳品に思います。




明るい色目のものは一色も挿されていないにも関わらず、
真円というかたちがそうさせるのか。

丸い月が、山中にふわりと上がったかのようにも思わせます。



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染色家の志村ふくみさんが紹介される番組を、
かつて観させていただいたことがあります。


藍の発色に月齢が関係するという、興味深いお話をなさっていました。
長い経験の中で知り得たであろうこの不思議が、
より、ご自分の求める藍に近づく重要な鍵になられたと。




染色も、やきものも、それ以外のものも
月の明かりがあるからこそ、人々は夜影の濃密なその色を
より深く、古い記憶を呼び起こすかのように
自身の心中にも映し見るのかもしれません。




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江戸期の、ほの暗い落ち着いた夜陰を思わす呉須は
黒とも藍とも言えぬ、言葉にするともったいないような
月と古い闇の印象を真っすぐに語りかけてくれます。


そして自身を、居るわけでも無い山中独居の佳き世界に誘う
小さな鍵のような小皿かと。




陶工たちがそっと残してくれた夜が、幾星霜を超え、
そこにあるように思います。





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  花 うるはしく咲き代り

  夕ぐも にほひ妙なれば

  山樵(やまがつ)の身を 好しとして

  外山(とやま)に粗朶(そだ)を集め居る



    境涯は罪なくして

    配所の月を見るに似たりとや 言はん



              ― 山中消息 《抜粋》 / 佐藤 春夫 (1892-1964)














 瑠璃皿     御売約 個人蔵(全点)








                      百芍丹
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by h_s_t | 2014-01-23 21:22 | 品々のこと
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